
編集業務の基本用語一覧
現場で役立つ基礎知識を企画〜印刷まで工程別に解説
社内報や広報誌をはじめとした編集・制作の現場では、さまざまな専門用語が使われます。「トンマナって何?」「校了と責了はどう違うの?」など、こうした言葉の意味が曖昧なまま、業務を進めてしまうケースも少なくありません。用語を正しく理解しておくことで、制作会社やデザイナー、ライターといった関係者間のコミュニケーションが円滑になり、ミスや手戻りの防止にもつながります。
本記事では、企画から印刷・公開までの工程に沿って、編集業務でよく使われる用語をまとめて解説します。
1. 【企画・構成】に関する用語
コンセプト
制作物全体の方向性や、核となる考え方・テーマのことです。「誰に、何を、どう伝えるか」を端的に表したもので、企画・デザイン・文章表現のすべての判断基準になります。コンセプトが曖昧なまま進めると、トーンや内容に一貫性が生まれにくくなるため、最初の段階で言語化しておくことが重要です。
ターゲット/ペルソナ
いずれも想定される読者像を指す言葉ですが、粒度が異なります。ターゲットは「30代の中堅社員」のようなおおまかな属性、ペルソナは「32歳・営業職・子育て中・情報収集はスマホ中心」のように具体的な人物として落とし込んだものです。年齢や職種だけでなく、関心や課題まで想定することで、企画や表現の方向性が定まりやすくなります。
トーン&マナー(トンマナ)
色や雰囲気、印象を表す「トーン」と、様式や作風を指す「マナー」を組み合わせた言葉で、文章やデザインに統一感を持たせるための指針のことです。「親しみやすい/フォーマル」「やわらかい/硬い」といった方向性を設定することで、媒体としての一貫性を保つことができます。
ラフ
ページごとのレイアウトや構成を簡易的に示した下書きのことです。デザインの本制作に入る前に、大まかな配置イメージを関係者間で共有することで、認識のズレを防ぎ、制作の手戻りを減らします。
台割(だいわり)
誌面全体のページ構成を一覧にまとめた設計図のことです。どのページに何のコーナー・記事が入るかを、表形式や見開き形式で整理します。各ページの内容や順序、ボリュームを俯瞰できるため、全体のバランス調整や進行管理に役立ちます。
▼台割の種類や作り方については、以下の記事で詳しく解説しています。
2. 【取材・原稿作成】に関する用語
リード文
記事の冒頭に置かれる導入文のことです。記事のテーマや要点を簡潔にまとめ、読者に「続きを読みたい」と思わせる役割を担います。リード文の質が記事全体の読了率を左右するといっても過言ではありません。
キャプション
写真・図・グラフなどに添える説明文のことです。ビジュアルだけでは伝わりにくい情報を補足し、内容理解を助ける役割があります。
テープ起こし(文字起こし)
録音した音声を、文字に書き起こす作業のことです。「あのー」「えーっと」などの話し言葉を一字一句そのまま書き起こす「素起こし」、不要な部分を取り除く「ケバ取り」、読みやすい文章に編集する「整文」など、用途に応じていくつかの手法があります。
リライト
既存の原稿を見直し、書き直す作業を指します。構成の再設計や表現の調整を行い、より伝わりやすい内容へとブラッシュアップします。誤字脱字などの軽微な修正は「校正」で対応しますが、構成の変更や大幅な書き換えを伴う場合は「リライト」として行います。
3. 【編集・校正】に関する用語
校正
原稿の誤字脱字や表記ミスなどを確認し、修正する作業です。内容の正確性ではなく、「文字の誤りがないか」「レイアウトや体裁が崩れていないか」「修正指示が正しく反映されているか」といった点を確認します。
▼校正の役割と精度を上げるポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
校閲
内容の事実関係や表現の適切さなどを確認する作業です。校正が「表記の正しさ」を確認するのに対し、校閲は「内容の正確さ・適切さ」をチェックします。人名・役職名・固有名詞・数値のファクトチェックに加え、不適切な表現や法的リスクの有無なども確認対象となります。
▼校正と校閲の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
ゲラ
レイアウトされた状態の確認用印刷物やPDFのことです。語源は、活版印刷時代に活字を並べて仮組みするためのトレイ(galley)に由来し、「校正紙」「校正刷り」とも呼ばれます。ゲラを確認して赤字(修正指示)を入れ、制作会社やデザイナーに戻すのが一般的な流れです。
赤字
ゲラや原稿に書き込む修正指示のことです。一般的には校正記号を用いて記入します。最近はPDFのコメント機能を使うケースも増えていますが、「どこを」「どのように修正するか」が明確に伝わるように記入することが重要です。
素読み(すよみ)
原稿を最初から通して読み、全体の流れや誤字脱字を確認する校正手法です。他の資料と照合せず、自分の目だけで確認するシンプルな方法です。まず素読みで全体のリズムや読みにくさを把握し、その後に突き合わせで詳細なチェックを行うと効率的です。
突き合わせ
原稿とゲラを照らし合わせながら、一語一句比較して確認する校正手法です。特に数値・固有名詞・日付など、正確性が求められる箇所のチェックに有効です。
表記統一/表記ゆれ
同じ意味の言葉が異なる表記で混在している状態を「表記ゆれ」と言い、それをそろえることを「表記統一」と言います。「ウェブ」と「Web」、「メール」と「Eメール」などが代表的な例です。あらかじめ表記ルールを定めておくことで、校正作業の効率化につながります。
▼表記ゆれを防ぐ方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
ルビ
漢字の読み方を示すふりがなのことです。難読漢字や専門用語にルビを振ることで、読みやすさや理解度を高める役割があります。校正時には、ルビの内容だけでなく、サイズや位置が適切かどうかも確認します。
入稿
完成した原稿やデータを制作会社に渡すことを指します。入稿データの不備は後工程に影響するため、事前のチェックが重要です。制作会社側で修正や編集の必要がなく、そのまま印刷できるデータを渡すことは「完全データ入稿」と呼びます。
初校
原稿をもとに作成された、最初の校正用データまたはゲラのことです。初校の内容やレイアウトを確認し、制作会社やデザイナーに修正指示を出して戻すことを「初校戻し」と言います。
再校
初校戻しの修正を反映させたゲラのことで、「二校」とも呼ばれます。再校を確認し、修正指示を出すことを「再校戻し」と言い、以降は「三校」「四校」と続きます。
念校
最終確認として行う校正のことです。細部までチェックし、見落としがないかを確認します。
内校(うちこう・ないこう)
外部に確認を依頼する前に、制作側が内部で行う校正のことです。内容の誤りや表現の不備をあらかじめ確認しておくことで、外部とのやり取りや手戻りを減らすことができます。
校了
すべての校正・修正作業が完了し、印刷や公開に進めると判断した状態のことです。最終確定を意味し、校了後は原則として修正ができないため、慎重に判断することが大切です。
責了
「責任校了」の略で、修正の最終確認を制作者側に委ね、クライアント側は最終ゲラを確認をせずに校了とすることです。修正内容が軽微な場合に使われます。
4. 【デザイン・レイアウト】に関する用語
版面(はんづら)
ページ内でテキストや画像などを配置する領域のことです。ページ全体から余白(マージン)を除いたエリアで、版面のサイズを決めることでレイアウトの基準が定まります。版面が狭すぎると窮屈な印象に、広すぎると視線が散り、読みにくさにつながります。
▼誌面を構成する基本的な要素については、以下の記事で詳しく解説しています。
マージン
ページの上下左右に設ける余白のことです。余白の取り方によって誌面の印象が大きく変わり、広めに取ると洗練された印象に、狭いと情報量の多い印象になります。
級(Q)
文字サイズを表す単位で、1級=0.25mmです。書籍や雑誌の本文では、一般的に11〜14級が使われています。
▼同じく文字サイズを表す単位である「ポイント」との違いは、以下の記事で詳しく解説しています。
ジャンプ率
見出しと本文など、異なる要素間の文字サイズの比率のことです。ジャンプ率が高い(サイズ差が大きい)ほど視覚的な強弱がつき、メリハリのある印象になります。一方、ジャンプ率が低い(サイズ差が小さい)ほど落ち着いた印象になります。媒体の特性や読者層に合わせて、適切に設計することが重要です。

ノンブル
ページ番号のことで、フランス語の「nombre(数)」に由来します。通常、表紙や裏表紙にはノンブルを入れず、本文が始まるページを1ページ目とするケースが一般的です。デザインの都合でノンブルを誌面に表示させたくない場合、製本時に見えなくなる位置にノンブルを配置する「隠しノンブル」という方法もあります。
組版(くみはん)
入稿された原稿や画像を誌面に配置し、レイアウトする作業のことです。一般的には、DTPソフト(Adobe InDesignなど)を使ってデザイナーやDTPオペレーターが行います。
禁則処理(きんそくしょり)
句読点や括弧など、行頭・行末に配置してはいけない文字のルールを自動的に適用する処理のことです。例えば、「、」「。」「)」が行頭に来ないように、「(」が行末に残らないように調整します。DTPソフトやWebのCSSで設定することが多く、禁則処理が適用されていないと読みにくい誌面になってしまいます。
可読性
文章がスムーズに読めるかという「読みやすさ」を示す指標です。行間・字間・フォント選びなどが可読性を左右し、長文になるほど重要になります。
判読性
「文字の形が区別しやすく、読み間違えにくいか」を示す指標です。「ロ」と「口」、「1」と「l」など、形が似た文字の識別しやすさは、フォント選びによって左右されます。
視認性
文字や情報がひと目で認識できるかという「見えやすさ」を示す指標です。文字サイズ・色・フォントや、背景とのコントラストなどが視認性に大きく影響します。
▼可読性・判読性・視認性の違いと向上のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
コントラスト
色や明るさ、サイズなどの差によって生まれる視覚的な強弱のことです。デザインにおいては、文字色と背景色のコントラストが特に重要で、コントラストが低いと文字が読みにくくなります。コントラストを適切に付けることで、視認性の向上につながります。

アイキャッチ
読者の目を引くために使用する画像・ビジュアルのことです。Webでは記事一覧に表示されるサムネイル、紙媒体では特集扉のビジュアルなどが該当します。読者がコンテンツを読みたいと思うきっかけを作る重要な要素です。
解像度/dpi
画像の精細さを示す指標で、1インチあたりのドット数を「dpi(dots per inch)」という単位で表します。印刷物では一般的に300〜350dpi、Webでは72〜96dpi程度が目安です。解像度が不足していると、印刷時に画像が粗く見えるため注意が必要です。
トリミング
写真や画像の一部を切り取って使用する編集作業のことです。必要な情報だけを強調したり、レイアウトに合わせて構図を調整したりする際に用いられます。目的に応じて、被写体のアップや不要な背景の削除、比率の変更などを行います。
補色(ほしょく)
色相環上で正反対に位置する色同士の組み合わせのことです。例えば「赤と緑」「青とオレンジ」などが該当します。補色同士を組み合わせることで、互いの色が引き立ち、強いコントラストと視覚的なインパクトが生まれます。ただし、使い方によっては刺激が強くなり、かえって見づらくなる場合があるため、バランスには配慮が必要です。
▼補色をはじめとした色の組み合わせや基本については、以下の記事で詳しく解説しています。
5. 【印刷】に関する用語
色校正(いろこうせい)
実際の印刷に近い状態で色味を確認するための試し刷りのことです。モニター上の表示と印刷物では色の見え方が異なるため、本番前に仕上がりをチェックする目的で行います。コストや時間がかかるため、写真が多い誌面や色の再現性が求められる場面で実施されることが多いです。
トンボ
印刷物の仕上がりサイズや断裁位置を示す目印となるマークです。形が昆虫のトンボと似ていることから、この名称で呼ばれています。チラシやパンフレットなど、あらゆる印刷物において欠かせない要素です。

塗り足し/裁ち落とし(たちおとし)
断裁線(仕上がりサイズ)より外側までデザインや画像を延ばすことです。断裁で切り落とされる領域であるため、「裁ち落とし」とも呼ばれます。断裁時のわずかなズレによって白いフチが出るのを防ぐために行います。一般的には、仕上がりサイズの外側に3mm程度まで塗り足しを設けておく必要があります。

オフセット印刷
「版」を用いて印刷を行う手法で、版に付けたインキを一度ブランケットと呼ばれるローラーに転写(オフ)し、そこから用紙に印刷(セット)する仕組みです。色の再現性が高く、仕上がりが美しいのが特長です。大量部数の印刷に適しており、部数が増えるほど1部あたりのコストを抑えやすくなります。
オンデマンド印刷
版を使用せず、データから直接印刷する手法です。少部数でもコストを抑えやすく、短納期に対応できる点が特長です。一方、大量部数になるとオフセット印刷に比べてコストが割高になる場合があります。
輪転機(りんてんき)
ロール状の紙を連続的に送りながら印刷する大型の印刷機です。短時間で大量に印刷することが可能なため、新聞や大量部数の雑誌・チラシなどの印刷に適しています。一方、セットアップのコストが高いため、少部数には不向きと言えます。
カンプ/デジコン
いずれもデザインやレイアウトの最終イメージを確認するためのサンプルのことです。デジコンとは「デジタルコンセンサス」の略で、主に高精細な簡易色校正システム(DDCP)などを用いて出力される確認用データを指します。
A判/菊判/B判/四六判(しろくばん)
印刷用紙の規格やサイズを示す呼称です。A判は国際規格であるのに対し、菊判・B判・四六判は日本独自の規格です。原紙サイズ(断裁前の紙のもともとの大きさ)で比較すると、「A判 < 菊判 < B判 < 四六判」の順に大きくなります。菊判はA判、四六判はB判の印刷物を作成するのに適しています。
斤量(きんりょう)/連量(れんりょう)
いずれも用紙の厚さ・重さを示す指標です。一定サイズの原紙を1,000枚(1連)積み重ねたときの重量をキログラムで表したもので、数値が大きいほど厚い用紙となります。印刷業界では、用紙の厚さを「コート紙 90kg」のように連量で表記するのが一般的です。
CMYK/RGB
CMYKは、シアン・マゼンタ・イエローの色料の三原色に、ブラック(Key Plate)を加えた印刷用のカラーモードです。これらのインキを組み合わせることで、さまざまな色を表現します。
一方、RGBは赤・緑・青の光の三原色で色を表現するデジタル向けのカラーモードです。RGBで作成したデータをCMYKに変換すると色が変わることがあるため、印刷用データはCMYKで作成・確認することが重要です。
4C/1C/特色
印刷に使用するインキの種類・数のことです。4C(4色)はCMYKを使うフルカラー印刷、1C(1色)は黒1色のモノクロ印刷を指します。特色は、CMYKでは再現しにくい色を専用インクで表現する方法です。
6. まとめ
編集・制作の現場では、多くの専門用語が日常的に用いられており、それぞれの意味や役割を正しく理解しているかどうかが、制作の質や進行のスムーズさに大きく影響します。用語の理解が曖昧なまま業務を進めてしまうと、関係者間での認識に齟齬が生まれ、ミスや手戻りの原因にもなりかねません。
また、編集業務は制作会社やデザイナー、ライターなど、複数の関係者と連携して進行するケースが一般的です。共通言語となる用語を正しく押さえておくことは、円滑なコミュニケーションだけでなく、制作物全体の品質向上にもつながります。ぜひ本記事の内容を、日々の業務における基礎知識として活用してみてください。




