
校正記号の使い方とは? 修正ミスを減らす赤入れのポイント
校正作業のやりとりの中で、こんな「もどかしさ」を感じたことはありませんか?
「修正を依頼したはずの箇所が、意図しない形で直ってきた」
「人によって指示の入れ方がバラバラで、意図を汲み取るだけで一苦労……」
実は、校正作業において意外とコストがかかっているのが、この「修正指示のやりとり」です。
文章のどこに間違いがあり、どのように修正したいのか。これらを効率的に伝える手段が「校正記号」です。校正記号は、誰が見ても一目でわかる「共通言語」のようなもの。標準化されたルールがあるため、お互いが記号の意味さえ知っていれば、スムーズに意思疎通が図れます。
ただし、校正記号を使えば修正作業者に意図が100%伝わるかというと、残念ながらそういうわけではありません。指示の取り違え(コミュニケーションロス)を最小限に抑え、「迷わない、見落とさない」赤入れを行うためには、校正記号を使いつつ、さらにいくつかのポイントに気をつける必要があります。
本記事では、校正でよく使われる代表的な校正記号をご紹介しながら、修正ミスを減らす赤入れのポイントについてもあわせて解説します。
1. 校正記号とは?
まずは、「校正記号」とはどのようなものかを簡単に説明します。
「校正記号」とは、原稿や印刷物の校正などを行う際に使用する記号のことです。“校正の指示内容を明確にすることによって、印刷物作成の能率向上を図る”ことを目的として、日本では1965年に日本産業規格(JIS)の「JIS Z 8208」として規定され、その後2007年に改定されました。
校正記号が規定されている「JIS Z 8208:2007」では、文字・記号に関する修正指示の書き方だけでなく、修正指示の記入には赤色を使用すること(ただし、補助的な指示や、紛らわしい場合は赤色以外も可)や、後述する「引出線」の書き方なども定められています。
2. 校正記号を使うメリット
校正記号を使用することには、主に以下の4つのメリットがあります。
2-1. 誤解やコミュニケーションロスを減らせる
校正記号は、「どこを」「どうするか」をセットで示せるため、「誰が読んでも解釈がぶれにくい」修正指示を作成しやすくなります。
2-2. 修正指示の作成時間を大幅に短縮できる
修正内容を言語化して文章(テキスト)で説明するのは、意外と時間がかかる作業です。それと比較すると、本記事でご紹介する「文字・記号の削除」や「入れ替え」の校正記号であれば、わずか1~2秒で書き込めます。1ページに何十か所も修正がある場合、この「数秒の積み重ね」が大きな時短につながります。
2-3. 紙面(画面)が見やすくなる
校正記号と引出線を効果的に使うことで、余白を有効活用できるため、紙面(画面)をすっきりと整理することができます。また、「修正がどの程度あるのか」という作業量も、ぱっと見ただけで直感的に把握できるというメリットもあります。
2-4. 「共通言語」によってチームの連携がスムーズになる
担当者が変わった場合や、外部の制作会社へ確認・修正を依頼する場合でも、校正記号のルールを共有できていれば、説明の手間がなくスムーズに連携できます。
▼以下の記事では、校正の精度を上げるポイントについてご紹介しています。
3. よく使われる校正記号
ここからは、校正の現場でよく使われる校正記号をご紹介します。
3-1. 文字・記号の修正
誤字を見つけた場合は、以下のように修正指示を入れます。具体的には、修正対象の文字に丸や斜線を入れるなどして「始点と終点」を明確にしたうえで、引出線を引き、変更後の文字を書き入れます。

なお、必ずしもこの3通りの書き方でなければいけないというわけではありません。重要なのは、「修正範囲(始点と終点)を明確にすること」です。
望ましくない例を見てみましょう。

Aは、「修正範囲の明示」と「引出線」の両方がないパターンです。修正作業者にとってはどの部分を修正すべきか判断しづらく、意図しない修正や修正漏れにつながるリスクが格段に高まります。
Bは、「引出線」はあるものの「修正範囲の明示」がないパターンです。1文字のみの修正であれば問題ない場合もありますが、2文字以上になると修正範囲の解釈に齟齬が生じる可能性があります。意図しない修正につながるリスクがあるため、修正範囲はできるだけ明確に示すのが望ましいです。
Cは、「引出線」がないパターンです。修正が少ない場合は問題になりにくいものの、修正箇所が増えると、どの指示がどこを指しているのか判断しづらくなり、修正漏れのリスクが高まります。
▼誤字脱字の効果的なチェック方法については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
3-2. 文字・記号の削除
不要な文字・記号を削除して詰めたい場合は、以下のように「トル」または「トルツメ」と記載します。

なお、削除後に空白を残したい場合は、「トルアキ」または「トルママ」と記載します。先ほどの「文字・記号の修正」と同様に、「修正したい箇所の始点と終点(修正範囲)を明確にすること」が重要です。
以下、望ましくない例を見てみましょう。

Aは、「引出線」と「トル」の両方がないパターンです。見落とされるリスクが高く、修正漏れにつながる可能性があります。
Bも同様に、見落とされるリスクが高いパターンです。加えて、指示内容が明確でないため、意図しない修正につながる可能性があります。
Cは、「引出線」が修正不要の箇所にまでかかってしまっているパターンです。修正範囲の誤認につながり、意図しない修正が発生する可能性があります。
3-3. 文字や記号の挿入
文字や記号を挿入したい場合は、以下のように「どこに挿入するか」を明確に示したうえで、挿入する文字・記号の上下を「2本線」で囲みます。

また、以下のように、「文字・記号の修正」の書き方を応用して指示する方法もあります。

文字や記号の挿入を表す校正記号についても、望ましくない例を見ていきましょう。

挿入する文字を2本線で囲っていない場合、修正作業者が「文字・記号の修正」と混同してしまう可能性があります。場合によっては、既存の文字を書き換える修正として解釈され、意図しない修正につながることもあります。
3-4. 句読点の挿入
句読点を挿入したい場合は、以下のように補助記号「∧」を使って指示します。

望ましくない例を見ていきましょう。

Aは、文字・記号の挿入に対して補助記号「∧」を使用している例です。修正する文言の文字数が多い場合、この書き方では指示の明確さが下がってしまいます。そのため、「引出線」を使って余白まで誘導したうえで、「2本線」で文字を囲み、挿入する文字であることを示すほうが望ましいでしょう。
Bは、補助記号「∧」を使用していない例です。補助記号「∧」を使用している場合と比べると、見落とされるリスクが高まります。
3-5. 文字の入れ替え
連続した文字を入れ替える際は、以下のように「逆S字」または「S」を使い、入れ替える文字同士を間にはさみます。

文字が離れている場合は、以下のように入れ替える文字を◯や□で囲み、矢印で入れ替えを指示します。

望ましくない例としては、これまでご紹介してきたように、「修正範囲の明示」がないケースが挙げられます。修正作業者との間に解釈のずれが生じ、意図しない修正が発生するリスクが高まります。

3-6. 改行の指示
改行を行う場合は、以下のように記載します。
※厳密には、この記号は「段落改行」といって、改行後の行頭を1文字空ける指示になります。ただし、改行指示の厳密な使い分けが求められない現場では、行頭を空けない通常の改行に対しても、この「段落改行」の記号が使われることが多いです。

改行を取り消して行を続ける場合は、以下のように記載します。

3-7. 字間の調整
字間を空けたい場合は、以下のように記載します。

「二分」とは、「1文字の二分の一の幅」という意味ですが、日本語(和文)の場合であれば「半角」と書いてもわかりやすいと思います。なお、1文字の三分の一の幅を表す「三分」や、四分の一の幅を表す「四分」が使われることもあります。
また、字間が空いていない状態は「ベタ組」と呼ばれます。字間が空いている状態からベタ組にしたい場合は、以下のように指示します。

4. 修正ミスを減らすためのポイント
ここからは、修正ミスを減らすために意識したいポイントを簡単にご紹介します。「迷わない、見落とさない」赤字を作成するための参考にしてみてください。
4-1. 「引出線」は短く、交差させない
これまでご紹介してきたように、「引出線」を使って指示内容を目立たせることは、赤字の見落としを防ぐうえで非常に効果的です。しかし、長い「引出線」によって修正範囲と指示内容(赤字)が離れすぎてしまうと、視線の往復回数が増え、かえって見落としや転記ミスを誘発する可能性が高まります。
さらに、「引出線」が交差していると、「どの指示がどの箇所とつながっているのか」を読み解く負荷が増えるため、肝心の修正精度や確認精度が下がってしまうリスクがあります。
修正箇所が増えるほど、どうしても赤入れ時の情報整理は難しくなりますが、「迷わない、見落とさない」赤入れの第一歩として、まずは「引出線は短く、交差させない」ということを意識してみてください。
4-2. 長い文章を差し替える場合は、別紙などを活用する
差し替えたい文章の周囲に十分な余白がない場合は、小さな字で無理に書き込むのではなく、以下の例のように「上記A参照」「別紙1参照」などと記載し、別の場所を参照してもらうほうが良いでしょう。
そのうえで、「A」として余裕のあるスペースに文章を書いたり、「別紙1」として文章を記載した紙を添付したりすると、修正内容をより正確に伝えやすくなります。

さらに、「別紙」とする場合は、手書きではなくコピー&ペーストが可能なテキストデータ(Wordやメモ帳など)で用意することで、修正作業者のタイピングミスを防ぐリスクコントロールにもつながります。
4-3. とにかく見やすく、明確に
見づらい赤字や読みづらい指示は、修正作業者に余計な解読コストを与え、修正漏れや誤修正のリスクを高めます。赤字の見やすさや明確さにこだわることは、単なるマナーや配慮ではなく、修正ミスを防ぐための合理的なリスク管理といえるでしょう。
以下は、「迷わない、見落とさない」赤字を作成するために効果的なポイントの一例です。
・修正指示が小さく見落とされそうな箇所は、鉛筆などで囲んで目立たせる
・校正記号の使い方や、指示の書き方に一貫性を持たせる
・丁寧な字を書くことで、可読性を上げる
「赤入れの時点で、修正はすでに始まっている」という意識で、ぜひこれらのひと手間を加えてみてください。
5. まとめ
今回は、校正でよく使われる校正記号とあわせて、修正ミスを減らすための赤入れのポイントをご紹介しました。単に誤りを指摘するだけではなく、「どのように伝えるか」を意識することで、リスクを抑えながら、より効率的に修正業務を行うことができます。
校正記号には、本記事でご紹介したもの以外にもさまざまな種類があります。校正記号がまとめた資料を手元に置いておけば、すべて覚えておかなくても、必要なときにすぐ参照できて便利です。下記のリンクでは、校正の現場でよく使われる校正記号をさらに網羅した『校正記号ハンドブック』を無料配布しています。「校正記号についてもっと詳しく知りたい」という方は、ぜひご活用ください。



