
ユニバーサルデザイン(UD)フォントとは?
特徴・メリットと無料で使えるフォントを紹介
「読者層が幅広いため、文字の見やすさにも配慮したい」
「フォントの種類が多く、どれを選べばよいのかわからない」
そんなときに候補の一つとなるのが、「ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)」です。
UDフォントは、文字の形や間隔などに工夫を施し、より多くの人が文字を見分けやすく、読み取りやすいように設計されたフォントです。駅や公共施設の案内表示をはじめ、学校の教材や配布物、医療・福祉関連の資料、ビジネス資料など、さまざまな場面で活用されています。
本記事では、UDフォントの特徴やメリット、使用する際の注意点に加え、おすすめのUDフォントや活用例をご紹介します。
UDフォントとは?
UDフォントとは、「ユニバーサルデザイン(Universal Design)」の考え方を取り入れて設計されたフォントのことです。
ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、障害の有無などにかかわらず、できるだけ多くの人が利用しやすいように、製品やサービス、環境などをデザインする考え方です。
UDフォントでは、この考え方を文字のデザインに取り入れています。例えば、似た形の文字を見分けやすくしたり、濁点・半濁点を認識しやすくしたりするなど、文字を正確に読み取りやすくするための工夫が施されています。
そのため、UDフォントは、多くの人が目にする情報や、内容を正確に伝える必要がある場面など、さまざまな用途で活用されています。
・駅や公共施設の案内表示
・学校の教材や配布物
・医療・福祉関連の資料
・ビジネス資料
・マニュアル・説明書
・広報誌・社内報
・Webサイト
なお、「UDフォント」という名称のフォントに共通する、厳密な字形の基準が定められているわけではありません。フォントメーカーや書体によって、文字の形やデザイン、読みやすさを高めるための工夫は異なります。
▼ユニバーサルデザインの考え方は、文字だけでなく色にも当てはまります。以下の記事では、色の見え方に配慮した「カラーユニバーサルデザイン」について詳しく解説しています。
UDフォントと一般的なフォントの違い
UDフォントは、一般的なフォントと比べて、文字を見分けやすく、読み取りやすくすることに配慮して設計されている点が特徴です。具体的には、次のような工夫があります。
文字の線をシンプルにして、文字の形を認識しやすくする
一般的なフォントでは、「はね」や「はらい」などを含め、書体ごとにさまざまなデザイン上の特徴が表現されています。
一方、UDフォントでは、こうした表現を抑え、文字の形をシンプルにすることで、一つひとつの文字を認識しやすくしています。これにより、文字サイズが小さい場合や、高齢者や視力の弱い方が読む場合でも、文字の形を認識しやすくなります。

また、明朝体のUDフォントでは、横線をある程度太くするなど、小さいサイズでも文字の形を把握しやすくなるよう設計されています。

濁点・半濁点を見分けやすくする
「ば」「ぱ」など、濁点や半濁点は、文字サイズが小さいと違いを見分けにくくなることがあります。
UDフォントでは、濁点・半濁点が文字本体と重なって見えたり、つぶれて見えたりしないよう、大きさや形、文字本体との間隔などが調整されています。
そのため、文字が小さい場合でも、濁点・半濁点の有無を確認しやすくなっています。

似た形の文字を見分けやすくする
「0(ゼロ)」と「o(オー)」、「I(アイ)」と「l(エル)」など、形が似ている文字は、フォントや文字サイズによっては見分けにくいことがあります。
UDフォントでは、それぞれの文字に違いを持たせ、輪郭や特徴を認識しやすくすることで、似た形の文字を区別しやすいよう工夫されています。

文字の内側の空間(アキ)を確保する
文字の内側にある空間(アキ)が狭いと、文字の一部がつぶれて見えたり、文字の形を認識しにくくなったりすることがあります。例えば、「3」や「S」は、アキが狭いと「8」と混同するおそれがあります。
UDフォントでは、このアキを広めに確保することで、文字の輪郭を把握しやすくし、つぶれや文字の混同を防いでいます。

このように、UDフォントは、文字の形や線、文字の内側のアキなどを細かく設計することで、文字を見分けやすく、読み取りやすくしています。
UDフォントを使う際の注意点
UDフォントは、読みやすさや見分けやすさに配慮して設計されたフォントですが、使用する際にはいくつか注意したいポイントがあります。メリットだけでなく特性も理解したうえで、用途に応じて適切に使い分けましょう。
1.読みやすさとデザインのバランスを考える
UDフォントは、読みやすさを重視して設計されているため、一般的なデザインフォントと比べると、装飾性や個性は控えめといえます。とはいえ、UDフォントだからデザイン性が低い、というわけではありません。
UDフォントにも、ゴシック体、明朝体、丸ゴシック体などさまざまな書体があり、フォントによってデザインや与える印象は異なります。
そのため、媒体の特性や目的、対象者などを考慮し、読みやすさとデザインのバランスを意識して選ぶことが大切です。
▼明朝体とゴシック体、それぞれの特徴や与える印象については、以下の記事で詳しく解説しています。
2.一般的なフォントに比べて選択肢が限られる
UDフォントは以前と比べて種類が増えており、用途に合わせてさまざまなフォントを選べるようになっています。
一方で、一般的なフォントと比べると、選択肢はまだ限られています。特に、デザイン性や個性的な表現を重視したい場合は、UDフォントの中だけではイメージに合うフォントが見つからないこともあります。
そのため、「読みやすさを優先するのか」「デザイン性を重視するのか」など、媒体の目的や用途に合わせてフォントを選びましょう。
3.閲覧環境によって表示が変わる場合がある
UDフォントに限らず、使用する端末やソフトウェアによっては、指定したフォントが正しく表示されない場合があります。
WordやPowerPointなどでフォントを指定した資料を共有する場合、相手の環境に同じフォントがインストールされていないと、別のフォントに置き換わって表示されることがあります。その結果、文字の見た目だけでなく、レイアウトが崩れる可能性もあるため注意が必要です。
こうしたトラブルを防ぐには、PDF化するなど、相手の環境に左右されにくい形式で共有する方法も検討しましょう。
4.UDフォントを使うだけで読みやすくなるわけではない
UDフォントを使用したからといって、それだけで読みやすい資料になるわけではありません。
文字サイズや行間、字間、余白、色のコントラスト、情報量など、レイアウト全体のバランスも読みやすさを左右します。
例えば、UDフォントを使用していても、文字が小さすぎたり、行間が詰まりすぎていたりすると、読みづらく感じることがあります。
フォントはあくまで、読みやすい情報設計を実現するための一つの要素です。「誰に、何を伝えるのか」を考えたうえで、フォントだけでなく、文字サイズやレイアウトなども組み合わせて設計することが重要です。
無料で使えるおすすめのUDフォントと活用例
UDフォントには、無料で利用できるものもあります。
また、UDフォントといっても、書体やデザインはさまざまで、それぞれに適した用途があります。フォントごとの特徴を理解し、用途に合わせて選ぶことが大切です。
ここでは、無料で使えるおすすめのUDフォントと、それぞれの特徴や活用シーンをご紹介します。
1.BIZ UDゴシック/BIZ UD明朝
「BIZ UDゴシック」「BIZ UD明朝」は、ビジネス文書などに使いやすいUDフォントです。Microsoft Officeに標準搭載されているため、WordやPowerPointなどを使った資料作成にも適しています。
ゴシック体と明朝体があるため、資料の内容や目的に合わせて使い分けることができます。
Macでは「MORISAWA BIZ+」や「Google Fonts」から無料でダウンロードできます。
【おすすめ活用例】
・WordやExcelで作成するビジネス資料
・PowerPointのプレゼンテーション
・学校のプリント
・表やグラフを含む文書
2.UDデジタル教科書体
「UDデジタル教科書体」は、学習指導要領に基づいて開発された教育向けのUDフォントです。学習で使用する文字として、小学生や日本語を学ぶ外国人学習者などにも、文字の形を認識しやすく、読みやすくするための工夫が施されています。
個人による非商用利用であれば、一部バージョンを無料でダウンロードできます。
子ども向けの資料や、文字の読み取りやすさを重視する資料など、教育分野を中心とした利用に適したフォントです。
【おすすめ活用例】
・教材
・学校の配布物
・教育関連資料
・子ども向けの読み物
フォントを選ぶときのポイント
UDフォントに限らず、フォントにはさまざまな種類があります。実際にフォントを選ぶ際は、次の4つのポイントを確認しましょう。
1.目的を考える
まずは、何のために作る資料・媒体なのかを考えます。
文章をじっくり読んでもらう冊子なのか、必要な情報を短時間で確認してもらう案内資料なのかによって、適したフォントは異なります。
2.読み手を意識する
次に、誰が読む資料・媒体なのかを考えます。
社内向けなのか、高齢者や子どもが多く読むものなのかなど、対象者によって重視したいポイントは変わってきます。
3.使用する媒体・環境を確認する
紙に印刷するのか、Webサイトで使用するのか、スクリーンに投影するのかによっても、フォントを選ぶポイントは変わります。
また、複数人で編集したり、他の人にデータを渡したりする場合は、どのソフトで作成するのかなど、作業環境についても確認しておきましょう。
4.フォントの利用条件
無料で利用できるUDフォントでも、フォントごとにライセンスや利用条件が異なります。例えば、「個人利用のみ」「教育機関での利用に限定」「クレジット表記が必要」など、条件が設けられているケースもあります。
企業として利用する場合は、商用利用の可否や使用できる媒体、利用範囲などを事前に確認したうえで選びましょう。
UDフォントに関するよくある質問
UDフォントとは何ですか?
UDフォントとは、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れ、より多くの人が文字を見分けやすく、読み取りやすいように設計されたフォントです。
似た形の文字を区別しやすくしたり、濁点・半濁点を認識しやすくしたりするなど、フォントによってさまざまな工夫が施されています。
UDフォントは無料で使えますか?
無料で利用できるUDフォントもあります。ただし、フォントによって利用条件が異なるため、特に企業で使用する場合は、商用利用の可否や利用範囲などを確認しましょう。
WordやPowerPointでもUDフォントは使えますか?
使用するフォントが利用環境にインストールされていれば、WordやPowerPointなどで使用できます。ただし、作成したデータを別の環境で開く場合、同じフォントがインストールされていなければ、別のフォントに置き換わることがあります。データを共有する際は、相手の環境も考慮しておきましょう。
まとめ
今回は、UDフォントの特徴や一般的なフォントとの違い、活用されている場面、無料で利用できるフォントなどについてご紹介しました。
UDフォントは、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れ、より多くの人が文字を見分けやすく、読み取りやすいように設計されたフォントです。文字の視認性や判読性を高めるために、さまざまな工夫が施されています。
一方で、UDフォントを使用すれば、それだけで読みやすくなるわけではありません。「何のための資料なのか」「誰が読むのか」「どのような環境で使用するのか」を考えたうえで、フォントの種類や文字サイズ、行間、余白などを組み合わせて設計することが大切です。
読みやすいフォント選びは、情報をわかりやすく伝えるための第一歩です。多くの人が目にする媒体を制作する際は、UDフォントも選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。




