

漢字とひらがな、どっち!? 使い分けに迷ったときの6つの判断基準
PCやスマートフォンで文章を書く機会が増え、難しい漢字も簡単に変換できるようになりました。しかし、その一方で「この言葉は漢字で書くべきか、それともひらがなにするべきか…?」と迷う場面も多くなったのではないでしょうか。
漢字とひらがなの使い分けは、業界や企業、さらには個人によって異なり、必ず守らなければいけないルールはありません。
とはいえ、読みやすい文章を書くために、気を付けるべきポイントや一定の判断基準はいくつか存在します。
そこで今回の記事では、漢字とひらがなを使い分ける理由やその基準、またそれらを整理する際の注意点についてご紹介していきます。
どうして漢字とひらがなの使い分けが必要なのか?
まずは、以下の2つの文章を読み比べてみてください。
「当会場では様々な体験型イベントにご参加頂けます。
但し、予めお伝え致しました通り会場内での電話及び飲食は出来ませんのでご注意下さい。」
「当会場ではさまざまな体験型イベントにご参加いただけます。
ただし、あらかじめお伝えいたしましたとおり会場内での電話および飲食はできませんのでご注意ください。」
いかがですか?おそらく、2番目の文章のほうが読みやすいと感じた方が多いのではないでしょうか。
一般的に、漢字とひらがなの比率がおおよそ「3:7」で書かれた文章は、視覚的に読みやすいと言われています。このように、漢字とひらがなを意識的に使い分けることで、読者にとって理解しやすい文章を作成することができるのです。
漢字とひらがなを使い分ける6つの判断基準
それでは、漢字とひらがなのバランスがとれた読みやすい文章を書くためには、どうすればよいのでしょうか。ここからは、使い分けの参考となる6つの基準を解説していきます。
1.常用漢字に含まれない言葉はひらがなで書く
常用漢字とは、1981年に内閣が告示した「常用漢字表」に掲載されている漢字を指します。これは、「法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字」として定められたもので、この「常用漢字表」に含まれていない言葉は、ひらがなで書くのが一般的です。たとえば、「或いは」「繋ぐ」「殆ど」「貰う」などが該当します。
ただし、人名や地名などの固有名詞、ひらがなにすると読みづらい漢字、慣習として使われ続けている漢字に関しては、常用漢字に含まれていなくても漢字で記載し、ふりがなを振る場合もあります。
2.接続詞はひらがなで書く
文や節、句をつなげる接続詞は、ひらがなで表記することで、文章全体が読みやすく、柔らかい印象になります。
【例】
・したがって、本を読むことは重要だ。
・たとえば、料理や掃除といった家事が代表的だ。
・それにくわえて、彼は背も高い。
ただし、これらの漢字を常にひらがなで表記しておけばよいというわけではありません。以下のように、名詞や動詞として本来の意味で使われている場合は漢字で表記しましょう。
【例】
・部長の指示に従う。
・適切な事例がある。
・塩を加える。
3.補助動詞はひらがなで書く
「帰ってくる」「置いておく」「降っている」など、本来の意味が薄れ、補助的な役割を果たしている動詞のことを「補助動詞」と呼びます。補助動詞は文中で頻繁に使われており、漢字で書くと堅苦しいイメージを与えてしまうため、ひらがなで表記するのが一般的です。
【例】
・雨雲がやってきた。
・野球をやってみる。
・参加していただく。
ただし、補助動詞についても、本来の意味で使われる場合は漢字で表記します。
【例】
・兄が遊びに来た。
・2人で星を見た。
・頂いたお菓子を食べる。
4.形式名詞はひらがなで書く
「こと」「うえ」「とおり」など、本来の名詞としての意味を失った名詞を「形式名詞」と呼びます。これらの形式名詞を漢字で書くと、文章全体に占める漢字の割合が増え、読みにくくなってしまうため、一般的にはひらがなで表記します。
【例】
・彼女は話すことが好きだ。
・質問したうえで決める。
・予想したとおりの結果になった。
形式名詞も、本来の意味を持つ名詞として使われる場合は、漢字で書きましょう。
【例】
・事は重大だ。
・机の上に置いた。
・駅前の通りにある店。
5.副詞はひらがなで書く
動詞や形容詞などを修飾し、その意味を詳しく説明する役割を果たす品詞を「副詞」と呼びます。このような副詞や、副詞的に使われる連体詞・形容動詞は、ひらがなで表記するのが一般的です。
【例】
・あらためて説明してもらったので、理解できた。
・すでに確認しています。
また、「いろいろな」「さまざまな」といった副詞的に使われる形容動詞も、ひらがなで表記することでより読みやすくなります。
【例】
・いろいろなやり方がある。
・さまざまな種類のバラが植えてある。
6.副助詞はひらがなで書く
「まで」「など」「くらい」といった副助詞は、漢字で書くと「3時迄待つ」「10回位会っている」のように漢字が連続してしまうため、ひらがなで書くことで単語の切れ目がわかりやすく、読みやすい文章になります。
【例】
・3時まで待つ。
・肉や野菜などの生鮮食品が安い。
・1年に10回くらい会っている。
使い分けに迷ったときはどうする?
表記統一表を作成する
ここまで、漢字とひらがなを使い分ける6つの基準をご紹介しましたが、いざ文章を書く際、どの基準をどこで適用すべきか迷ってしまうこともあるかもしれません。そのような場合は、企業や媒体、個人ごとに表記ルールをまとめた「表記統一表」を作成するとよいでしょう。表記統一表を作成することで、どのように表記すべきか悩むことが減り、文章中の表記ゆれも防ぎやすくなります。
表記統一表を作成する際は、単語ごとに細かく定めるのではなく、品詞ごとにルールを決めることをおすすめします。たとえば、「接続詞はひらがなにする」「形式名詞はひらがなにする」「補助動詞はひらがなにする」など、おおまかなルールを品詞単位で設定することで、1単語ごとに細かい使い分けを覚える必要がなくなります。また、表記統一表に記載されていない単語に対しても、品詞ごとのルールに基づいて判断しやすくなり、よりスムーズに文章作成を進めることができるでしょう。
▼表記ゆれの防ぎ方については、以下の記事で詳しく説明しています。
外部の基準を参考にする
答えのない事柄にルールを設けるのは難しく、想像以上に悩むものです。どのルールを基準にするか判断がつかない場合は、拠り所となる外部の基準を参考にするのも一つの方法です。主な参考資料の例としては、常用漢字表や日本語表記ルールブック、記者ハンドブックなどが挙げられます。
【参考資料の例】
・『文化庁|常用漢字表の音訓索引』
・『日本語表記ルールブック(第2版)』(日本エディタースクール 編著)
・『記者ハンドブック 第14版 ―新聞用字用語集―』(一般社団法人共同通信社 編著)
まとめ
今回は、漢字とひらがなを使い分ける際の判断基準についてご紹介しました。
冒頭で触れたように、漢字とひらがなの使い分けに絶対的なルールはありませんが、読者層や媒体の特性を意識して、読み手にとって理解しやすく読みやすい文章を心がけることが大切です。自分たちに適した表記ルールを設定し、バランスよく使い分けることで、漢字とひらがなを上手に使い分けましょう。