

明朝体とゴシック体、どう使い分ける?印象が変わるフォント選びのコツ
明朝体とゴシック体。どちらもよく使われるフォントですが、「資料の見出しにはどちらを使えばいいんだろう?」「Webサイトや広告にはどんなフォントが向いているの?」と使い分けに迷ったことはありませんか?
また、異なるフォントを組み合わせることで読みやすさが向上したり、逆に全体の印象がちぐはぐになってしまったりと、使い方次第で仕上がりに大きく差が出ることもあるでしょう。
本記事では、代表的なフォントである明朝体とゴシック体の特徴や与える印象の違い、両者を併用する際のポイント、そして場面別の使い分けテクニックについてご紹介します。
明朝体とゴシック体の特徴・違いとは?
フォント選びに迷ったとき、まず押さえておきたいのが、明朝体とゴシック体それぞれの特徴と違いです。どちらも日本語フォントの代表的な書体であり、与える印象や読みやすさには大きな違いがあります。
ここでは、明朝体とゴシック体の特徴と与える印象、そして適した使用場面について解説していきます。
明朝体の特徴と印象
明朝体は、筆の運びを意識したデザインが特徴のフォントです。内容を丁寧に読み込んでほしい場面に適しており、書籍や新聞、論文、公式文書などで広く使われています。
「うろこ・ひげ」がある
縦線の上部や横線の末端に、「うろこ」や「ひげ」と呼ばれる装飾がついており、文章にメリハリや品のある印象を与えます。ちなみに欧文フォントでは、このような装飾を「セリフ」と呼びます。
縦画が太く、横画が細い
線の太さに強弱があるため、リズムが生まれ、長文でも読みやすくなります。
与える印象
知的さ、上品さ、クラシカル、フォーマル
ゴシック体の特徴と印象
ゴシック体は、線の太さが均一で、すっきりとした力強さを感じさせるフォントです。目立たせたい見出しやスライド資料、Webバナーなど、読者に「ぱっと読ませたい」場面に適しています。
「うろこ」がない
装飾のないシンプルな作りのため、視認性が高く、すっきりとした印象を与えます。
欧文フォントでは、これを「サンセリフ」と呼びます。
線幅が均一
線の太さに差がないため、明瞭でストレートな印象を与えます。
与える印象
力強さ、カジュアルさ、シンプル、モダン
明朝体とゴシック体を混在させるのはあり?
「一つの文章の中で、明朝体とゴシック体を両方使ってもいいの?」と疑問に思う方も多いでしょう。結論から言えば、適切な意図とルールのもとであれば混在はOKです。むしろ、上手に使い分けることで情報が整理され、強調したい部分を明確にできます。ただし、無秩序に併用すると読みにくく、統一感に欠けるデザインになってしまうリスクも。
そこでここでは、混在のメリットと注意点、そして使い分けのコツを具体的に解説します。
フォント混在のメリット
フォントを意図的に使い分けることで、文章は単なる文字の羅列から、読者の視線を誘導し、情報の「重要性」や「優先度」を伝えるメッセージへと変わります。
たとえば、本文を明朝体で構成し、強調したいキーワードにゴシック体を用いることで、単調になりがちな文面にリズムと変化が加わり、読み手の集中力を保ちやすくなります。
また、見出し・小見出し・本文といった文章構造に応じてフォントを使い分ければ、情報の階層が明確になり、読み手は内容を整理しながらスムーズに読み進めることができるでしょう。
このように、フォントの混在は視覚的なデザイン設計の一部として、情報の伝わり方を大きく左右する重要な手段となるのです。
よくある失敗例と避けたい使い方
フォントの混在は、効果的に使えばデザイン性を高める武器になりますが、意図を持たずに行うと逆効果になることもあります。
特に注意したいのは、書体を必要以上に多用してしまうケースです。1ページや1画面の中であまりに多くのフォントを使ってしまうと、視線の流れが分散し、全体のまとまりが損なわれてしまいます。使用するフォントは、原則として2種類までに抑えておくのが理想的です。
また、文書のトーンや目的に合わないフォントの使用も避けましょう。たとえば、明朝体で上品に仕上げた文章の中に、唐突にカジュアルな丸ゴシックを用いると、読み手にちぐはぐな印象を与えてしまいます。さらに、細すぎる明朝体と極端に太いゴシック体の組み合わせも、可読性が下がり、視覚的なストレスを感じさせる原因になります。
このように、フォントの混在は視覚的なメリハリをつける一方で、やり方を誤ると読みにくさや違和感を生む“諸刃の剣”でもあるのです。
▼可読性・判読性・視認性については、以下の記事で詳しくご紹介しています。あわせて参考にしてみてください。
混在させる際の3つのポイント
フォントを混在させて効果的なデザインをつくるには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。その中でも特に意識したいのが、「役割の明確化」「使用フォントの絞り込み」「組み合わせの相性」の3点です。
役割の明確化
まず重要なのは、どのフォントを主に使い、どのフォントをアクセントにするのかという役割分担をはっきりさせることです。たとえば「本文は明朝体、強調部分や見出しはゴシック体」というように、使い分けの基準を明確にすることで、一貫性が生まれ、ブレのない仕上がりになります。
使用フォントの絞り込み
使用するフォントの種類は、できる限り2種類に絞りましょう。やむを得ず3種類使う場合も、本文・見出し・装飾といった用途ごとに使い分けるよう心がけましょう。これにより、視覚的なノイズを抑え、すっきりとした印象に仕上がります。
組み合わせの相性
和文フォントと欧文フォントを混在させる場合には、書体の相性も考慮しましょう。
たとえば、明朝体にはローマン体(例:Times New Roman)、ゴシック体にはサンセリフ体(例:Helvetica, Arial)が調和しやすく、デザインにもまとまりが生まれます。
シーン別のフォントの使い分け
フォントの選び方に「絶対の正解」はありませんが、用途に応じた適切な使い分けを行うことで、読みやすさと印象の良さを両立させることができます。ここでは、プレゼン資料・Web・印刷物といった代表的なシーン別に、明朝体とゴシック体の効果的な使い分けをご紹介します。
プレゼン資料・企画書の場合
プレゼン資料では、視認性とメッセージの明快さが求められます。そのため、ゴシック体をベースに構成されることが多いです。
見出し:ゴシック体(太字推奨)
見出しは短く力強いフレーズが多いため、太めのゴシック体が適しています。視線を引きつける効果もあり、資料全体の印象を引き締めることができるでしょう。
本文:明朝体または細めのゴシック体
内容の深さを伝えたい場合は、明朝体でフォーマル感を演出するのも有効です。ただし、スクリーンに投影する場合は、細めのゴシック体の方が視認性に優れます。
強調箇所:太字ゴシック体
プレゼンでは、重要なキーワードやポイントなど、強調したい箇所を明確にすることが重要です。太字のゴシック体を使うことで、視線を誘導することができ、メリハリのある資料に仕上がります。
Webサイトの場合
Webでは、読みやすさとデバイスへの最適化が最優先されることが多いため、基本的にはゴシック体ベースで設計されます。
本文:ゴシック体
明朝体は細い横線が多く、小さな画面や低解像度の環境では可読性が下がってしまうため、Webにおいては避けられる傾向にあります。特にスマートフォンでの閲覧を想定する場合は、線の太さが均一なゴシック体のほうが可読性に優れていると言えるでしょう。
見出し・本文:メディア記事では「見出し=ゴシック体/本文=明朝体」も
Webマガジンやコラムのように、文章をしっかり読ませたいコンテンツでは、視認性だけでなく、上品さや落ち着きといった印象も求められます。
そのため、「見出し=目を引くゴシック体」、「本文=じっくり読ませる明朝体」という組み合わせを採用することで、読みやすさとデザイン性のバランスを取ることができます。
印刷物・冊子の場合
印刷物では特に文字のディテールがきれいに再現されるため、フォントの美しさや質感を意識した使い分けがデザインの質を左右します。
上品さや格式を出したい場合:明朝体
企業パンフレットや行政広報誌、冠婚葬祭の案内状など、落ち着いた印象を求められる場面では、明朝体が最適です。
親しみやすさ・元気な印象を出したい場合:ゴシック体
子ども向け冊子、イベントチラシ、サービス紹介資料などは、ゴシック体が適しています。明るくカジュアルな印象に仕上がります。
▼幅広い読者層が想定される場合は、UDフォントの使用もおすすめです。
まとめ
今回は、明朝体とゴシック体の特徴や印象の違い、混在のポイント、場面に応じた使い分け方をご紹介しました。
どんなに凝ったデザインでも、読み手に伝わらなければ意味がありません。フォント選びに迷ったときは、「読みやすいか」「内容がきちんと伝わるか」という基本に立ち返ることが大切です。